
こんにちは🌸サクラダ治療室の前田です。
「高温期が10日も続かない」「高温期の途中で体温が急に落ちる日がある」「高温期が毎回バラバラ」という相談はとても多いです。
基礎体温は、排卵のあとに体温が上がり、そのまま高い状態(高温期)が続き、妊娠しなければ体温が下がって生理が来る、という流れが理想とされています。
この高温期は、黄体という組織が分泌するホルモン(主にプロゲステロン=黄体ホルモン)によって支えられています。高温期が不安定ということは、黄体からのホルモン分泌が十分でない可能性がある、という見方につながることがあります。
この記事では、
- 高温期とは何か
- 高温期が短い/途中で下がると何が起こるのか
- どのくらいなら受診したほうがいいか
- 自分でできる確認・生活の見直しは何か
を、整理してお伝えします。
是非ご覧ください✨
高温期とは何か
1-1. なぜ体温が上がるのか
排卵後、卵巣の中に「黄体」という組織ができます。黄体はプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌します。プロゲステロンは体温をわずかに上げる作用を持っており、その影響で基礎体温が高くなります。この体温が高い時期が高温期です。
つまり高温期は「黄体がちゃんと働いてプロゲステロンを出しているか」を間接的に見ることができる期間でもあります。
1-2. 高温期は何のための期間か
高温期の役割の一つは、着床の準備です。プロゲステロンによって子宮内膜がふかふかに維持され、受精卵を受け入れやすい環境を保ちます。また、着床直後の妊娠初期を安定させる役割もあります。
このため、高温期が安定して続くことは「妊娠しやすいかどうか」というより「妊娠が成立したときに受け入れる側の準備が出来ているか」を見る、指標にもなります。
高温期が短い・安定しないと起こりやすいこと
2-1. 着床の準備が十分でない可能性
高温期が極端に短い(目安として10日未満など)場合、黄体から分泌されるプロゲステロンの量や持続が十分でない可能性があります。これは「子宮内膜を厚く保つ時間が短い」「内膜がはがれるのが早い」という形で現れることがあります。
その結果
- 着床のチャンスを逃してしまう
- 妊娠が成立しかけても維持が難しい
といったリスクにつながる場合があります。
ここで注意したいのは、「短い=必ず黄体機能不全」という訳ではなく、排卵のタイミングずれ・基礎体温の測り方のばらつき(測る時間が日によって違うなど)も影響するということです。なので複数周期を見て判断していきたいです。
2-2. 「タイミングは合っているのに妊娠が続かない」と感じる背景
高温期の途中で体温が急に落ちる→また上がる→また落ちる、といった波がある場合、プロゲステロンの分泌が安定していない可能性があります。この状態だと、受精卵が子宮に来たタイミングと、子宮側の着床準備のタイミングにズレが生じることがあります。
「排卵検査薬でタイミングを合わせているのに結果が出ない」というケースでは、実際には“卵が来る側”だけでなく“受け入れる側の維持力”の問題になっていることもあります。
よくあるサイン
以下は、高温期に関する相談でよく共有されるパターンです。
- 高温期が10日未満で終わることが多い
例:高温期に入って8〜9日で体温が下がり、そのまま生理が来る。 - 高温期の途中で1日だけ大きく体温が下がる日がある
「36.8→36.4までストンと落ちて、翌日はまた36.8に戻る」というように、谷間ができる。 - 高温期が“高いのか高くないのか”自分でも判定しづらい
体温の全体像がギザギザで、低温期と高温期の差がはっきりしない。 - 高温期が毎回長さバラバラ(ある周期は9日、ある周期は14日など)
高温期の安定性がない場合、排卵から次の生理までのホルモン分泌が安定していないサインになることがあります。
こういったパターンが毎周期続く場合は、黄体からのホルモン量や、その前段階である排卵の質、その他ホルモン(プロラクチン・甲状腺など)の関与を確認したほうがいいケースがあります。
関係する要素
4-1. 黄体機能(プロゲステロン分泌)
高温期を支えているのは黄体ホルモン(プロゲステロン)です。黄体が十分に機能していないと、高温期が短くなったり、不安定なカーブになったりします。これがいわゆる「黄体機能不全」という言われ方に近い状態です。
4-2. 排卵の質
黄体は、もともと排卵した卵胞から出来上がっているものなので、排卵自体が不安定だと黄体も不安定になります。
・卵胞が十分に成熟する前に排卵してしまった
・排卵まで時間がかかった
などがあると、そもそもの黄体を作る段階での問題になることがあります。
この「卵胞が十分に成熟できたか」は、FSH・LHの出方や、プロラクチンが高すぎないかなど、脳と卵巣のホルモンのやり取りとも関係します。
4-3. プロラクチンや甲状腺など他ホルモンの影響
プロラクチンが高い状態や、甲状腺ホルモンのバランス(TSH高めなど)が乱れている状態は、排卵とその後の黄体機能の両方に影響することがあります。
「高温期が安定しない→高プロラクチン血症が疑われた」というのは実際によくある流れです。
つまり高温期は、単に「体温をみているだけのグラフ」ではなく、「排卵」「黄体」「甲状腺」「プロラクチン」など複数の要素をまとめて間接的に見ている、と考えるのが近いです。
どのタイミングで医療機関に相談すべきか
次のような場合は、一度医療機関(婦人科・不妊治療クリニックなど)への相談を検討しても良いかもしれません。
- 高温期がほぼ毎周期10日未満
- 排卵しているはずなのに生理周期が極端に長い(45日以上など)が続く
- 高温期の途中で急激な体温低下が毎回起きる
- 化学流産のような“ごく初期での妊娠反応→消失”が複数回起きている
相談の際は、基礎体温表を持参すると、相談もしやすいです。
あわせて、TSH(甲状腺)、プロラクチン、黄体ホルモン(プロゲステロン)などの血液検査を提案されることがありますが、これは珍しいことではありません。
日常で見直しておきたいこと
医療的な確認と並行して、生活面でもできることもあります。ポイントとしては「ホルモン分泌のリズムを乱す要因を減らしていく」という点になります。
6-1. 睡眠と夜間覚醒
途中で何度も起きる・寝つきが悪い状態は、ホルモン(FSH、LH、プロゲステロンなど)の分泌リズムに悪影響を与えます。
・就寝1〜2時間前に激しい作業/思考をやめる
・スマホ・PCの強い刺激を減らす
・眠るときの姿勢で肩や首が固まりすぎないようにする
といったことを気をつけることは、単に「休む」ではなく、実際にホルモン分泌を安定させていくという意味合いもあります。
6-2. 交感神経の張りっぱなし
常に緊張状態(肩が上がっている、呼吸が浅い、食いしばりが強い)は、脳が「今はストレス対応を優先」と判断しやすく、排卵まわりのホルモン分泌シグナルが後回しになることがあります。
・首〜肩〜胸郭の筋緊張を定期的にゆるめる
・呼吸が胸の前側だけでなく肋骨まわり全体に広がるように意識する
といった身体的アプローチは、自律神経(交感神経・副交感神経の切り替え)を整える目的があります。
鍼灸や手技では、まさにこの「常に交感神経優位になっている部位(首・肩・胸郭)」を調整し、夜間に副交感系が働く状態を作りやすくするというアプローチをとることがあります。こちらのアプローチを続けることで、結果的に高温期の安定に繋がっていく方が多くいらっしゃいます。
6-3. 血糖の乱高下
強い空腹→砂糖・カフェインで一気に押し上げる→急降下、という血糖の乱高下は、ストレスホルモン(コルチゾールなど)を大きく動かし、交感神経優位を固定化しやすいです。
交感神経優位が固定されると、排卵や黄体機能にも影響しやすくなります。
・朝を糖質とカフェインだけで済ませない
・午後の間食も糖だけでなくたんぱく質・脂質を入れていく
といった血糖安定の工夫は、結果的に高温期サポートにもつながります。
🌸まとめ

高温期は「黄体からのプロゲステロンが子宮内膜を維持して、着床しやすい状態をつくっている期間」。
高温期が短い(例:10日未満で終わる)・途中で体温が落ちる・ガタガタしている場合、黄体ホルモン分泌や排卵の質、プロラクチンや甲状腺など他のホルモンの影響が考えられます。
基礎体温が安定しない状態が複数周期続く場合や、化学流産が複数回起きる場合は、医療機関に相談して血液検査や黄体機能の評価を受けることも検討すると良いです。
日常生活の面では、夜間の睡眠の質、交感神経優位(常に緊張している状態)、血糖の乱高下などを整えることが、ホルモンの分泌リズムを安定させるうえで大事になってきます。
高温期は「ただの待ち時間」ではなく、妊娠の成立と維持に関わる重要な期間です。グラフを見るときは、「日数・安定性・途中の大きな落ち込み」このポイントを軸にチェックしてみてください✨
















【目次】
1-1. なぜ体温が上がるのか
1-2. 高温期は何のための期間か
2-1. 着床の準備が十分でない可能性
2-2. 「タイミングは合っているのに妊娠が続かない」と感じる背景
・高温期が10日未満で終わる
・高温期の途中で体温が大きく下がる日がある
・高温期のライン自体がガタガタ
4-1. 黄体機能(プロゲステロン分泌)
4-2. 排卵の質
4-3. プロラクチンや甲状腺など他ホルモンの影響
6-1. 睡眠と夜間覚醒
6-2. 交感神経の張りっぱなし
6-3. 血糖の乱高下